クールアンドドライ
 「チョコレートのケーキってのは、覚えてたよ。まぁ、詳しい事は真希に聞いたんだけど。」
「ああ、確かにザッハトルテって名前は中学生のときに知りました。でも、嬉しいです!覚えててくれたこと。」

 久しぶりに食べたチョコレートのケーキは、懐かしくて、そして甘かった。
課長が買って来てくれた、すこし渋めのワインと良く合う。
ワイングラスなんてないから、普通のガラスのコップで呑んでいた。

 ワインで酔ってたうえに、懐かしくて甘いケーキに私は、すっかり油断していた。
「課長、私は浮かれてたみたい・・れす。」
思わず、言わなくて良いことを言っていた。
せっかく、彼が今日のことを言うのを避けてくれていたのに。

「だって、クリスマスに好きな人と過ごせるの、始めてれ・・・うれしかったんらもん!今日はもう、そこの定食れも・・なんだって・・うれしかったんらもん!うー、なのりーー青木の、ばかやろー!浮かれてもいいじゃんよーー」

 なんだか頭が重たくて、テーブルに頬を付けていた。
ふと、課長の顔を見たら、驚いていた。
何でそんな顔?
「悪かったですねー、経験値ひくうれー」
「いや、そうじゃなくて。・・咲希の気持ちが聞けるとは思わなかったから。」
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