クールアンドドライ
境界線の向こう側
 今年最後の出勤を迎えた。
年の瀬というのは、やっぱり忙しない。
色々とあったけど、明日からしばらくお休みだと思うと、寒い出勤中も、なんとか耐えられる。
 会社に着いて、着替えていつものように自分のデスクについた。
癖で、つい、三課の方を見てしまう。
あれ?課長、まだ来てないみたいだ。

 始業時間になっても課長は、姿を見せなかった。
どうしたんだろう?
つい、チラチラと三課の方をみてしまう。
今日の主な仕事は、大掃除だったりする。
と言っても、午前中はいつもどおり事務仕事だ。
廃棄する資料をシュレッダーにかけていると、
小田さんが見えた。
機嫌が良さそうだ。

 「滝ちゃん、これもお願いしていい?」
「はい、大丈夫ですよ。」そう言って、紙の束を受け取った。
「小田さん、仲直りしたんですか?」
「まあね~。」と言いながら、彼女は、ネックレスを触っている。
「青木さんからのプレゼントですか?」
「そうなのー。滝ちゃんの腕のは、課長から?」
「えっ?」
どうしよう、こういう場合って否定したほうがいいの?
いや、別に悪い事してるわけじゃ無いんだけど、「ハハ」曖昧に笑ってごまかした。
「あのー、私、給湯室にお手伝い行ってきますね、これ、やっぱり小田さんがやってください。」そう言って、紙の束を返し、その場を離れた。
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