クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「今度、ユウも誘ってやるよ」

 笑顔で提案してくる一馬に私は即答した。

「遠慮する。男同士で楽しく話しなよ」

「楽しく、なぁ。あいつ、俺のことはあれこれ聞いてきたくせに、あんな可愛い彼女がいることを黙っているなんて」

 そこまで言って、一馬は再び煙草を咥える。幹弥はそういう男だ。人のことは上手く話に乗せて聞きだすくせに、自分の情報はけっして与えない。……彼女には、違うのかな。

 私は静かに首を横に振る。もう考えないようにしないと。

「よし、ユウ。もうこうなったらお前でいいわ。とりあえず付き合おう」

 煙草を吸い終わったところで、突然放たれた一馬の言葉に私は目を剥いた。

「はぁ?」

「いいだろ。もうこの現状を打破するには、俺に彼女を作るしかない。学生たちには彼女がいるって言うわ」

「なにその理由」

 眉を曇らせて、怒気を含ませた口調で言うも、一馬は全然気にしていない。

「お前もどうせ彼氏いないし、付き合ってやるよ。ユウだって俺のこと嫌いじゃないだろ? だったら今までと同じようなノリでいいじゃん」

 あまりにも突拍子もない展開に、頭が重たくなってくる。

 一馬のことはずっと好きだった。いつか私のことを女性として見てくれたら、その瞳を自分に向けてくれたら。何度もそんなことを願った。

 「付き合おう」って言ってくれるのを夢見たこともある。

 それが叶ったのに、今は嬉しさもなにも感じない。当たり前だ、一馬のことはとっくに吹っ切っていた。彼に出会ったから。

 “いい子”でいられなくなるのは、いつも私の心を乱すのは、もうずっと前からたったひとりだけだ。
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