クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「どうだ片岡、久々の同期との再会。驚いたか?」

「お、驚きますよ」

 してやったり、という顔の弘瀬先生にツッコまれ、私は食い入るようにして見ていた視線をようやく彼からはずした。弘瀬先生は豪快に笑う。

「実は、後期から開講する外部講師による開発経済論なんだが、桐生が担当してくれることになったんだ」

「え」

 意外な事実に目を丸くすると、先生はわざとらしく咳払いする。幹弥は笑みをたたえたまま、こちらを見ていた。

「桐生建設コーポレーションは日本の森林資源を有効活用できるようにと、今、CLT建設の促進に力を入れているからな。その現状や今後の課題などを講義してもらおうと打診していたんだが、まさか未来の代表がわざわざ引き受けてくれるとは」

「先生の人徳ですよ」

 すかさず幹弥が口を挟み、弘瀬先生の機嫌はうなぎ上りだ。

「あまり知られていないが、うちの大学の図書館も一部CLT建設で作られているんだぞ」

「そうなんですか!?」

 まさかの事実に私はつい声をあげた。

「ちょうどお前らが入学する前くらいに工事してな。全部ではなく四階と五階だけだが」

 私はそこで幹弥の方を向いた。十年経って、ようやくわかった事実に少し心乱される。

「桐生は昔から、プレゼンも上手かったし、問題ないだろ。女学生の受講も増えそうだ」

 そこで一息つき、先生は内緒話でもするかのように声を潜めて、私と目を合わせた。
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