クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「だって、嫌だよ。なんで私だけ幹弥のものにならないといけないの? そんなのずるいっ」

 中途半端な優しさも、気まぐれな独占欲も、そんなのいらない。翻弄されるだけなら、苦しくなるだけなら。

「簡単に欲しいなんて言わないで」

「簡単なんかじゃない」

 間髪を入れずに否定され、私は少なからず動揺する。幹弥は額同士がくっつくほど顔を寄せ、その表情にはいつもの余裕さなんて微塵もなかった。

「今なら、全部あげられる。優姫が望んでくれるなら。もう優姫を置いてどこかにいったりしない。ずっとそばにいる。それでも?」

 蓋をしていた想いに、胸が苦しくて、息も詰まりそうになる。

「……っ」

 言葉よりも先に、誤魔化しようのない涙が溢れる。そのまま唇を重ねられる。温もりを分け与えるようなキスに身を委ねたくなる。

「好き」

 唇が離れた瞬間、私は吐息混じりに呟いた。すると幹弥は目を丸くしてキスを中断させ、こちらを見下ろしてくる。私は、ねだるように、彼の首に腕をかけると、ずっと言えなかった本音を口にした。

「くれるなら全部じゃなきゃ嫌だ。私のことが好きなら、私だけを見てよ」

「それを優姫が言う?」

 呆れたような、苦笑い。でも、なんだか泣きそうにも見えた。それを確認するまもなく、唇が塞がれる。やっぱりずるい。でも初めて余計なことを考えることもなく彼との口づけに溺れることができた。
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