クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
毒を塗って、キスをして
 熱い。完全にのぼせた。

 まだ火照る体をベッドに沈め、私は大きく息を吐く。幹弥は心配そうに、いや正確には嬉しそうに私の介抱をしながら、ベッドの傍らで笑っている。

 唇の感覚が麻痺しそうになるほどキスを交わして、冷静になった私は照れつつも幹弥から距離を取ろうとした。けれど幹弥は私の腰に腕を回して制すると、大胆にも私の服に手をかけてきた。

 さすがに狼狽えて抵抗を試みると『このままじゃ風邪を引く』と冷静に指摘される。

 そして、『いい!』と言う私を無視して、幹弥はさっさと私の服を脱がすと、自分も脱いで、いつのまにか溜めていたバスタブにふたりで浸かることになったのだ。

 大人ふたりが入っても足を十分に伸ばせるくらいの広いバスタブに、なぜか私はうしろから抱き抱えるようにして入っていた。されるがままとはこのことだ。

 戯れのように項や耳に口づけられ、泣きそうになる。そんな私を幹弥は絶対におもしろがっていたに違いない。のぼせたのは、半分は幹弥のせいだと思う。

「水いる?」

「うん」

 素直に答えると、幹弥はグラスに入った水を目の前で飲みはじめる。なんの嫌がらせだろうと、ぼんやり見ていると、彼はいきなり私に覆い被さってきた。

 どういうことかと尋ねる前に唇が重ねられる。目で訴えられ、私は緊張しつつもぎこちなく唇の力を緩めた。

「……っふ」

 重力に従い、液体が流し込まれ、今の自分の体勢などを極力意識しないように、嚥下することに必死になる。

 すべて飲み干すと、幹弥は名残惜しそうに唇を離したかと思えば、不意打ちのように軽く舐めとってきた。
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