クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「だから俺は、どこかの誰かさんと違って、ずっと優姫一筋なんだけど?」

 ふと、幹弥がこちらを覗き込むようにして、どこか含んだ言い回しをしてきた。

「なに、その言い方」

 ムッとして返すと、幹弥はあからさまに嫌そうな顔をしている。

「事実だろ。あんな扱いをされながら、いつまでも未練タラタラって顔して。ずっと江頭のことが好きだったんだろ。でも、あいつは優姫にとって毒だよ」

「好きじゃないよ」

 迷うことなく、私は言い放つ。幹弥が言葉を止めて、訝し気にこちらをじっと見つめてくるけれど、私は彼としっかり目を合わせた。

「一馬のことは、もうとっくに好きじゃない。今は仲のいい友達で、いい同僚だとは思っているけれど、それ以上は……」

「いつから?」

 幹弥の鋭い声が発言を遮る。そして彼は、強い眼差しを私にぶつけてきた。

「いつから好きじゃない?」

 一拍の間があってから、私は迷いを振り切り意を決して答える。

「……毒なのは幹弥のほうだよ。十年前から、もうずっと私は幹弥の毒に侵されているんだけど」

 シーツを握りしめて白状すると、幹弥は切なそうに顔を歪めて私との距離を縮めてきた。

「その言葉、そっくり返す。不自由な中でも思い通りに生きてきたし、生きていけると思っていたのに。こんなにも欲しくて、こんなにも思い通りにもならないのは世界中でただひとり、優姫だけだよ」

 言い終わるのと同時に、唇が重ねられる。何度も角度を変えて口づけられ、そのまま後ろに倒される。いつもなら微妙に抵抗してみせるところだけれど、このときは素直に彼からの口づけを受け入れた。
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