クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
【番外編】確実に、着実に
 あれ? なんか温かい。はっきりとしない意識の中で、そばにある温もりに私はそっと安堵の息を漏らした。懐かしくて、安心する。

 無意識に求めるように手を伸ばして、引き寄せようとした。よかった。ちゃんとここにいてくれる。

「……ナイト」

「残念。俺を求めてくれたのかと思えば」

 その声でぱちくりと目を開ける。顔を上げれば、すぐそこに幹弥の顔があり、頭が真っ白になる。

「え……なんで?」

 起きてすぐのおかげで上手く声にならない。なぜか私は自分から彼と密着するように体を寄せ、共にベッドに横になっていた。

 幹弥はおかしそうに笑うと、私の前髪を掻き上げて額に唇を寄せる。 

「寝惚けてる? 昨日のこと覚えてない?」

「昨日……」

 おとなしく反復して私は頭を働かせた。そして、どこか夢現だった意識が徐々に覚醒し、それと共に昨日の記憶もしっかりと蘇ってくる。

 そう、ここは私の家じゃない。昨晩、図らずとも積もり積もった自分の気持ちを彼にぶつけることになり、幹弥の気持ちも知ることができた。

 おかげで、随分と遠回りした私たちの関係は、落ち着くべきところに落ち着いたというか、なんというか……。

 色々思い出され、自然と頬が熱くなる。さらには今、自分はなにも着ていない。どう考えても今更だけれど、私はこれでもかというくらい狼狽えた。彼の肌に隠れるように顔を埋める。
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