クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「俺の前でまで強がらなくてもいい」

 そんな表情でそのセリフはずるい。私は彼の頬に手を添えて、軽く笑った。

「うん。けど本当に大丈夫だよ。そろそろ起きよう」

 提案してから、どちらともなく唇を重ねる。そして彼の方が先に体を起こしたので、私は言いそびれていたことを思い出した。

「あの、私の前でも好きに煙草吸ってもいいよ」

 意外だったのか、シャツを羽織った幹弥が不思議そうにこちらを見下ろしてきた。おかげで私は続きを迷ったけれど、正直に話すことにする。

「好きじゃない、って言ったけどべつにすごく苦手ってわけでも、嫌いってわけでもないから」

 だから、一馬が吸うことに対しても、とくになにも言わなかった。彼が特別だからとかそういうことじゃない。むしろ逆で――

「幹弥に吸わないでって言ったのは、煙草を吸う姿にちょっとびっくりして。知らない人みたいだったから、つい寂しくて言っちゃったんだ」

 そのせいで、一馬への気持ちを誤解されるのも、彼に気を使わせて吸うのを我慢させるのも本意じゃない。そう思って話したのに、なぜか突然、幹弥は起こしていた体を倒し、私に覆いかぶさってきた。

「なに?」

 目を見開いて尋ねると、彼はいつもの余裕のある笑みを浮かべている。

「いや。あまりにも優姫が可愛らしいことを言ってくれるものだから」

「私は真面目に言ったんだけど?」

「うん。だからそういうところが可愛いなって」

 なにか反論する前に口づけられる。啄むだけのキスを幾度となく繰り返され、次第に焦らされている気になる。でも、ここでもっと、と求めたら、もう起きられなくなる。
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