クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 やんわりと顔を逸らして抵抗してみると、あらわになった首筋に唇を寄せられ、私は小さく悲鳴をあげた。

「ちょっと、起きるんでしょ!?」

「起きる気なくした」

 勢いで抗議したものの、あっさりと返される。しかし、ここで私も譲るわけにもいかない。そもそも幹弥は今日は仕事があると昨日言っていた。私だって用事がある。

 その旨を指摘すると、いささか不満げな色を浮かべた顔でこちらを見てくる。 

「まぁ、続きは夜にしようか?」

「誰も泊まりにくるとは言ってないけど?」

 勝手に結論づけた幹弥にツッコみつつ私たちはゆっくりとベッドから起き上がった。

 昨日、着ていた服は幹弥のおかげでびしょ濡れになったので着られない。けれどそこは用意周到な彼が妹さん経由かはわからないけど、新しい服をちゃっかり用意してくれていた。

 Aラインの淡いピンク色のワンピースは甘すぎないデザインだけれど、それでいて可愛らしさもある。スカート丈が短い気もするけれど、そこまで文句は言えない。

 自分では選びそうもない系統の服で、どうしたって照れてしまう。けれど幹弥は、からかうことなく「可愛いよ」と褒めてくれたので、私も余計なことは言わなかった。

 キッチンを借りて、コーヒーを淹れることにする。なんだか今、自分がここにいるのが変な感じだ。

 いい香りが立ち込めたところで、着替えた幹弥が顔を出した。ネクタイはまだしていないけれど、すっかり仕事仕様の彼にコーヒーが入ったことを告げ、おとなしくふたりでテーブルにつく。
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