クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「それを聞く?」

 どういうことか詳しく聞こうとしたところで、幹弥が続けた。

「優姫は、タイトルの『Alle Liebe rostet nicht』の意味を知ってる?」

 そういえば知らない。また馬鹿にされそうな気もしたけれど、ここは素直に尋ねてみる。

「どういう意味なの?」

 けれど、聞いておいて幹弥は声にする前に、苦虫を噛み潰したような顔になった。

「優姫には言いたくないな」

 なにそれ。自分から話題にして、その切り返しはないんじゃない? 文句のひとつでも言おうと思ったけれど、あまり時間もなさそうなので私は飲み終えたカップを持って立ち上がった。

「優姫の用事ってなに?」

 なにげなく聞かれて、私は一瞬だけ返事を躊躇った。でも、嘘をついてもしょうがない。

「不動産屋さんと待ち合わせしてるの」

 予想通り、幹弥がわずかに目を見張った。彼から視線をはずし、私はわざとらしくため息をつく。

「今、住んでるところは、ナイトとの同居前提で選んだ物件だから少し割高だし。もう当分ペットを飼うつもりもないから」

 もちろん、ペットを飼っていなくても入居は可能だ。でも当たり前だけれど、周りはペットがいる人ばかりで、ナイトとの思い出がありすぎる部屋は、どうしても気持ちがつらくなるときがある。

 忘れるわけじゃない。でも、ちゃんと前に進まないと。そう思って行動を移すことにした。

 大学の近くで、それでいてあまり学生が利用しないような物件をいくつか不動産屋さんにピックアップしてもらったので、今日は実際に候補物件を見に行く予定だ。
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