クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「その話、今すぐ断れ」

 つらつらと説明していると、幹弥からきっぱりとした声が飛ぶ。

「なんで?」

「それはこっちのセリフ。昨日、言っただろ。結婚しようって」

 改めて口にされ、私はつい照れてしまった。

「そ、そうだね、ゆくゆくはね」

 その切り返しは、いたくお気に召さなかったらしい。幹弥は立ち上がると、怖いくらい真剣な面持ちでこちらに近づいてきた。

「なに? 冗談だと思った? なんなら今すぐ役所に行く?」

「それはさすがに……」

「俺は本気だけど?」

 もう狼狽えるしかない。幹弥は私の背中に腕を回して捕まえると、こちらをじっと見つめてきた。

「優姫」

 彼の低い声で名前を呼ばれ、反射的に目を瞑る。心臓が煩くて締めつけられるように痛む。

 幹弥は、私のことを心配しているのかな? だって、さっきもナイトの代わり、って……。

 そこで、私はゆるゆると瞼を開けた。

「私、幹弥を代わりにするつもりもないし、代わりにしたこともないよ」

 虚を衝かれた顔をする幹弥に私はしっかりと目を合わせた。私たちは十年も会っていなかった。一緒に過ごした時間は短くて、しかも、すれ違ってばかりで。

 だから、ちゃんと伝えたい、伝えないと。

「一馬のこと、好きだったけれど、幹弥に抱いてた気持ちとは違う。だって、一馬とは自分の気持ちを押し殺して上手くやってきたのに、幹弥にはそれができなかった」

 周りにいる女子に嫉妬して、つらくて幹弥に八つ当たりして。流されるように体を許したけれど、それは全部、幹弥だったから。十年前も、再会してからも。
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