クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「わかりました。お引き受けします」
「悪いな。ならさっそく講義で使う部屋を案内してやってくれ。今は学生もいないし、ちょうどいいだろ」
了承の意を伝え、弘瀬先生に挨拶する幹弥を待ってふたりで部屋を後にする。講義をする部屋は研究棟とはまた別の建物になるので移動が必要だ。
私は彼の半歩先を歩いて目線を合わせないようにする。幹弥はなにも言わない。私もなにも話さなかった。再び屋内に入ったときに、口火を切ったのは彼の方だった。
「髪、伸びたね。似合ってるよ」
十年ぶりに会った同期に対しては、妥当というか。それでもさらっと歯の浮くようなセリフを違和感なく言えてしまうのは幹弥だからだ。
なんて返そうか迷いつつうしろを振り返ろうとした、そのときだった。
「ユウ」
声をかけられ、私は視線を移す。階段の方から人懐っこい笑みを浮かべ、足早にこちらに向かって下りてくる男性の姿があった。
茶色く染められた髪は、やや軟派そうな印象を与えるけど、本人曰くこの年で白髪が目立ってきたんだという。チェックの襟付きシャツにジーンズと、随分ラフな格好をしていて、雰囲気は学生と見間違いそうになる。
「一馬(かずま)、あんたこんなところでサボってなにしてんの?」
「江頭先生、だろ。サボってねーよ。これから学科会議」
先に名前で呼んできたのはそっちでしょ、と思いながら声にしなかった。続けて一馬は私の後ろにいた彼に笑いかける。
「悪いな。ならさっそく講義で使う部屋を案内してやってくれ。今は学生もいないし、ちょうどいいだろ」
了承の意を伝え、弘瀬先生に挨拶する幹弥を待ってふたりで部屋を後にする。講義をする部屋は研究棟とはまた別の建物になるので移動が必要だ。
私は彼の半歩先を歩いて目線を合わせないようにする。幹弥はなにも言わない。私もなにも話さなかった。再び屋内に入ったときに、口火を切ったのは彼の方だった。
「髪、伸びたね。似合ってるよ」
十年ぶりに会った同期に対しては、妥当というか。それでもさらっと歯の浮くようなセリフを違和感なく言えてしまうのは幹弥だからだ。
なんて返そうか迷いつつうしろを振り返ろうとした、そのときだった。
「ユウ」
声をかけられ、私は視線を移す。階段の方から人懐っこい笑みを浮かべ、足早にこちらに向かって下りてくる男性の姿があった。
茶色く染められた髪は、やや軟派そうな印象を与えるけど、本人曰くこの年で白髪が目立ってきたんだという。チェックの襟付きシャツにジーンズと、随分ラフな格好をしていて、雰囲気は学生と見間違いそうになる。
「一馬(かずま)、あんたこんなところでサボってなにしてんの?」
「江頭先生、だろ。サボってねーよ。これから学科会議」
先に名前で呼んできたのはそっちでしょ、と思いながら声にしなかった。続けて一馬は私の後ろにいた彼に笑いかける。