クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「俺だけ情報を与えるのはフェアじゃないだろ?」
口角をにっと上げた幹弥の笑顔は、綺麗で、意地悪で、それでいて懐かしい。彼の変貌ぶりに戸惑うことなく私は視線を横に向ける。
『片岡、桐生はまだ独身らしいぞ』
先生も、余計なことを……。それにフェアじゃないのはどう考えても彼のほうだ。
いつだってこちらの事情や感情はおかまいなしに踏み込んでくるくせに、自分のことは表面的な部分以外はけっして触らせようとはしない。
「あれは弘瀬先生が勝手に言ったんでしょ? 私も結婚はしていないよ。はい、これで満足?」
「恋人は?」
わざと挑発的な言い方をしたのに、彼は気にすることもなく矢継ぎ早に尋ねてくる。私は声のトーンをやや落とした。
「……説明すんだし、もう戻るから」
逃げるように彼から踵を返そうとすると、強引に腕を引かれ、全面ホワイトボード仕様になっている壁に背中を押しつけられる。自分の置かれた状況に気づいたのは、背後にあるひんやりとした硬い感触でだ。
「答えてくれないなら質問を変える。まだあいつのことが好き?」
至近距離で見つめてくる彼の表情に、質問内容に、私は大きく目を見開いたまま硬直した。とっさに言葉が出てこない。
とにかくなにかを返そうと、結んでいた唇をほどこうとしたところで、それは阻まれる。彼が強引に唇を重ねてきたからだ。
「――っ」
反射的に顔を背けるように下を向いて抵抗する。私の髪が彼の頬を掠め、心臓は壊れそうに強く打ちつけ始める。
口角をにっと上げた幹弥の笑顔は、綺麗で、意地悪で、それでいて懐かしい。彼の変貌ぶりに戸惑うことなく私は視線を横に向ける。
『片岡、桐生はまだ独身らしいぞ』
先生も、余計なことを……。それにフェアじゃないのはどう考えても彼のほうだ。
いつだってこちらの事情や感情はおかまいなしに踏み込んでくるくせに、自分のことは表面的な部分以外はけっして触らせようとはしない。
「あれは弘瀬先生が勝手に言ったんでしょ? 私も結婚はしていないよ。はい、これで満足?」
「恋人は?」
わざと挑発的な言い方をしたのに、彼は気にすることもなく矢継ぎ早に尋ねてくる。私は声のトーンをやや落とした。
「……説明すんだし、もう戻るから」
逃げるように彼から踵を返そうとすると、強引に腕を引かれ、全面ホワイトボード仕様になっている壁に背中を押しつけられる。自分の置かれた状況に気づいたのは、背後にあるひんやりとした硬い感触でだ。
「答えてくれないなら質問を変える。まだあいつのことが好き?」
至近距離で見つめてくる彼の表情に、質問内容に、私は大きく目を見開いたまま硬直した。とっさに言葉が出てこない。
とにかくなにかを返そうと、結んでいた唇をほどこうとしたところで、それは阻まれる。彼が強引に唇を重ねてきたからだ。
「――っ」
反射的に顔を背けるように下を向いて抵抗する。私の髪が彼の頬を掠め、心臓は壊れそうに強く打ちつけ始める。