クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 専属のコンシェルジュが二十四時間体制で駐屯する高級マンションはセキュリティも万全で、エントランスはホテルのロビーのような造りだった。

 そして、一人暮らしをしているとは思えないほどの贅沢な部屋数、面積、内装。なにもかもが自分の住んでいる世界とは違うことを思い知らされる。

 連れて行かれた先は奥の寝室で、入ると暖色系のライトが自動で点く。いささか乱暴に、大きすぎるベッドに下ろされた。

 全然痛くはなかったけれど、スプリングの軋む音が耳について、すぐに体を起こそうとする。けれど幹弥が覆いかぶさるようにして阻んだ。

 無表情でこちらを見下ろしてくる彼が、おもむろに眼鏡をはずして、その表情に息を呑む。

 こっちの方が私にはよっぽどなじみ深い。記憶の中の彼よりも、ずっと大人びていて、でも怖いくらい綺麗なのは相変わらずだ。

 乱暴に自身のネクタイに指をかけて解きにかかり、シャツのボタンをはずして首元を緩める。合間から覗く肌は滑らかで、浮き上がる鎖骨をなぞるように目で追った。

「優姫」

 静かに名前を呼ばれ、意識を向けると、ゆっくりと額を合わせられる。 

「ここまできて、なに考えてる? 現れたのが俺じゃなくてあいつだったらよかった?」

 わずかに私は眉を曇らせた。それを見て幹弥が複雑そうに笑う。

「俺で残念? なら、悔しくて泣いてみれば?……でも、ほかの男に持っていかれるなんて冗談じゃない」
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