クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
憎らしくて、眩しくて
「このふたり、最後はお決まりでくっつくんだろうけど、今のところ微塵もそんな気配を見せないのが、むしろ清々しいほどだね」

 背中から聞こえてくる声に私は身を翻してそちらを向いた。背中合わせのソファをそれぞれ独占し、適当な世間話を時折混ぜながら私たちは読書する。彼とここで会うのはもう三回目になった。

 『Alle Liebe rostet nicht』はシリーズもので堅物で仕事一筋の男刑事と貴族の血を引くお嬢様のコンビが様々な事件を解決していくというものだ。

 巻数があるので、途中でそれぞれに恋人ができたりもして、私個人としてはかなりヤキモキする。

「できれば早くくっついてほしいよね」

「心配しなくても、次辺りでフラれた男を慰めるためにベッドインはするよ。気まずくなるだけだけど」

「ちょっと、ネタバレやめて」

 さらっと告げられた事実に私は瞬時に噛みつく。彼はこちらに顔を向けると、速やかに左手の人差し指を立てて、口の前に持っていった。

 おかげで私は慌てて口をつぐむ。このフロアは誰もいないとはいえ、声をあげれば下に響く可能性もある。

 誰のせいで……。と思いながら、あまりにも彼の仕草が嫌味なく様になっていたので私は、ぐっと堪えた。そして声の調子を意識して落とす。

「桐生くん」

「幹弥でいい」

 静かに呼びかけると、間髪入れずに返事があった。けれど私は返答に困ってしまう。
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