クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「いい、ナイト。このご飯は今日だけ。特別だからね」

 家に帰って、私は早速彼からもらったキャットフードをナイトにあげてみることにする。

 どこまでわかっているのか、いつも以上に喉を鳴らして甘えた仕草を見せるナイトは私の足元に自分の体をこすりつけてきた。

 いつものお皿に封を切って中身を入れる。そして、そっと定位置に置くと、ナイトは美味しそうに食べ始めた。

 その姿を眺めながら、なんとも言えない感じになった。ときどき、幹弥と過ごす時間は、全部私の夢なんじゃないかって、思うときがある。

 それくらい、図書館の五階で会うときと、普段の彼は別人だった。

『俺は君とは違って完璧だから』

 あの言葉の意味を嫌でも実感していく。みんなの知る桐生幹弥は、温和で、優しくて、話し上手で、頭も良くて、いつも多くの人たちに囲まれている。

 そんな彼のそばにいるのは綺麗な女子ばかりだ。私とは真逆で「可愛い」という言葉がぴったりの、自分に自信があってキラキラしている美人が多かった。

 とくにゼミも同じで、入学した頃から、彼とよく話している山下さんとは付き合ってるんじゃないか、という噂もあった。

 彼女は雑誌の読者モデルもしているらしく、同期の間でも人気だったし、お似合いのふたりが一緒にいると、それだけであらゆる憶測は飛ぶ。

 ただ彼が誰とどんな関係を築いていようと、私の関知するところでもないし、尋ねることもしない。

 だってあの図書館の五階で会う以外は私たちは友達とさえ呼べるかどうかも怪しいくらい親しくなかった。唯一の接点と言えるゼミでさえ、グループもまったく別だったし。
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