クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「でも、ユウがしているネックレス可愛いね。そんなの持ってたんだ」

「あ、これも猫ちゃんだ」

 このタイミングでネックレスのことを指摘され、私はわずかに動揺した。

 こんなはずじゃなかった。せっかく、今日はいつもにもまして、お洒落を頑張ったのに。ちゃんとつけているところを見せたかったのに。

 ……誰に?

 ふと自分の気持ちに引っ掛かりを覚えたところで、話題は転換していく。

「そういえばさー、山下さんがMILD(ミルト)のネックレスつけてたけれど、あれ桐生くんにもらったらしいね」

 彼の名前が出たこと、そしてその内容に私の思考は吹き飛び、固まるしかなかった。MILDは私も知っている国内の有名アクセサリーブランドメーカーの名前だ。

「え、やっぱり付き合ってんの?」

「そこまでは聞いてないけど、本人が言ってたよ。麗奈(れいな)―」

 山下さんと仲のいい女子が隣のグループにいた彼女を呼ぶ。近づいて来た山下さんは、ネイビーのカーディガンに生成り色のワンピースだった。

 スカート部分はフレアで広がりをみせ、トップスの部分はリボンとレースが派手すぎずにあしらわれている。

 可愛らしいと誰もが思う組み合わせで、彼女自身にとてもよく似合っていた。そして、首元にはシルバーの滴型のモチーフが輝きながら揺れている。
 
「そのネックレスって桐生くんにもらったやつ?」

 質問にまったく関係ない私がなぜか緊張した。興味のないふりをして返答を待つと、山下さんははにかんだ顔になる。
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