クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「あんまり言いふらさないでよ。夏休みに会ったときにちょっとね」

「え、プライベートで会ってるって、やっぱり付き合ってんの?」

「もー、いいじゃない」

「だってMILDのネックレスをなんでもないのに、あげたりしないでしょー」

 友人のツッコミに照れながらも山下さんは笑顔だ。嬉しいのがすごく伝わってくる。

「それにしても、すごく似合ってるよ」

「うん。桐生くんもそう言ってくれたんだ」

 彼女の発言で再び場がどっと湧く。私は会話に加わることなく、うつむき気味になった。

「あ、片岡さんのネックレスもすごく可愛い」

 まさかの山下さんの指摘に、私はとっさの反応に困った。そんな私を差し置き、答えたのは一馬だ。

「いやいや、全然似合ってないって。どう考えてもユウのキャラじゃないし」

「えー、江頭くん冷たい。可愛いと思うよ」

 すぐそばで会話する山下さんと一馬の話が、どこか遠くのことのように聞こえる。

「まぁ、ネックレスはな。でもコイツには可愛すぎというか。山下さんくらい可愛かったら似合うんだろうけど」

 そこで三限開始五分前の予鈴が鳴り響き、各々がバタバタと準備する。私は様々なことを思いめぐらせながら、複雑な気持ちが渦巻いて吐きそうになる。

 なんで、こんな気持ちになるの。この気持ちがなんなのかわからない。

 しかも三限が教授の都合で休講になったことを講義室近くまできて知り、私の気持ちは沈む一方だ。踵を返したところで、首に妙な感覚を覚える。
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