クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
『見ててイライラするから』

『可哀相な優姫を見て面白がることにするよ』

 あまりにも自分と違いすぎる山下さんと並んで思った。彼にとっては「可愛い」と言ったのも「似合う」と褒めたのも、本音のところじゃない。

 その言葉を向ける相手はほかにもいて、ネックレスだってわざわざプライベートで会ってまで渡したい相手も別にいる。

 全部真に受けていた自分が馬鹿みたい。最初からわかっていたはずなのに。傷つく必要なんてなにもないのに。

 そのとき左手首が力強く掴まれ、私は顔を上げた。手に持っていたネックレスが静かに床に落ちる。それに気を取られる間もなく幹弥が口を開いた。

「本当に、腹が立つ」

 怒っているのに、幹弥は笑っている。その顔の綺麗さに思わず息を呑んだ。

「誰になにを言われたのか、おおよそ予想はつくけど……なに? 優姫にとっては彼の言葉しか意味がないわけ? そんなに彼の存在が大きい?」

「痛っ」

 低い声と共に、掴まれていた腕に力が込められる。痛みで眉をひそめたけれど、幹弥は離してくれない。私は振り払うようにかぶりを振った。

「知らない。幹弥には関係ない。腹が立つなら、なんで私に関わるの? 私は幹弥のものでも、暇つぶしのおもちゃでもないっ!」

 拒絶するように叫ぶと、幹弥は私の腕を引いて自分の方に寄せた。迫力ある真剣な眼差しが私を捕える。

「なら、俺のものになればいいだろ」

 よく通る声が耳に響いて、思いっきり目を見開く。そして私は勢いよく、腕を振りほどいた。
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