クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 幹弥が住んでいたのはとてもではないが、学生が借りられるとは思えないような高級マンションだった。

 新築のいい匂いがして、モデルルームみたいだと感じる。玄関の広さからしてひとりで住んでいるとも思えない。

 けれど、ここに住んでいるのは自分だけだと幹弥は告げて先に部屋に上がった。ややあって、バスルームらしきところから顔を出した幹弥は、玄関で佇んだままでいる私に手に持っていた大きめのタオルをかけた。

「とりあえず上がりなよ。シャワー使う?」

 問いかけに静かに首を横に振った。

「いい。髪と服を拭いたら帰るから」

 ぶっきらぼうに返すと、幹弥がわざとらしくため息をついた。

「ここまで来て、部屋に上がらないなんて優姫らしいというか。ほかの女子なら間違いなく喜んで上がるだろうね」

 それを聞いて自然と浮かぶ疑問を口にする。

「ほかにも誰か、来たことがあるの?」

 山下さんとか?という言葉はすんでのところで飲み込む。そして、おもむろに視線を上げると幹弥の口角がわずかに上がった。

「さぁ?」

 はぐらかすようなお決まりの返答を、もう何度聞いただろう。でも、こうして彼と話すのはいつぶりだろうか。ひどく懐かしくて、こんなやりとりでも、また幹弥と話せたのがやっぱり嬉しかった。

 そういうことだったんだと思う。頑なな気持ちが少しだけ溶けて、幹弥の強引さもあって私は部屋に上がったのは。
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