クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 そんなことを思い巡らせていると、伸びてきた手が左頬に触れ、強引に幹弥の方を向かされる。そして奪われるように唇を掠めとられた。

「甘い」

 至近距離で眉を寄せながら幹弥は軽く自分の唇を舌で舐めとる。私は呆然とするばかりだった。けれど勘違いで片付けるには、唇の感触はリアルで彼との距離はあまりにも近い。

「なん、で」

「可愛いよ」

 間髪入れずに放たれた言葉に心臓を鷲掴みされる。言葉だけじゃない。幹弥の射貫くような眼差しも、低くて真面目な声も、怖いくらい真剣な表情も。全部に捕まる。

「可愛いよ、優姫は」

 再び唇を重ねられ、私はようやく抵抗を試みる。けれど、幹弥の肩を押しのけようとするも、びくともせず逆に体に腕を回され、逃げないように密着させられた。

 心臓が破裂しそうに痛くて、息さえおぼつかない。

 唇が離れてホッとする間もなく再び口づけられ、何度も交わされるキスに目眩を起しそうだった。いつのまにかソファの背に背中を預け、幹弥の好きなようにされる。

 こちらの気持ちなんておかまいなし。どこまでも自分勝手で最低。

 それなのに、キスの合間に慈しむように私の頭や頬を撫でたり、時折確かめるように心配そうな面持ちでこちらを窺ってくる。だから、私も本気で抵抗できなかった。

 ようやく唇が離れたとき、私は息が上がって、伏し目がちになった。まともに幹弥の顔を見られずにいると、予想外の言葉を彼から浴びせられる。
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