クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
幹弥と会ったのはそれが最後。それから彼を見ることはなかった。春休みに入って、新年度が始まっても幹弥の姿は大学になかったから。
人伝いに聞いた彼の話。ヨーロッパにある建築学が進んでいる大学に入学するためにここは一年で退学したのだと。
本当は高校を卒業した後にそのまま留学する予定だったけれど、家庭の事情や入学手続きの関係で一年伸びたんだとか。
寝耳に水だった。彼はそんなこと一言も言ってなかったし。でも、幹弥のマンションを訪れたときに、段ボールがいくつか転がっていたのを思い出した。
どうしてなにも言ってくれなかったのか、なんて思うほどでもない。彼にとって私は、そこまでの存在でもないし、別れることが決まっていたから、ああいうことになったのかも。
私も彼ともう顔を合わすことがないと聞いて少しだけホッとした。それが全部だ。彼がいなくなっても、私の大学生活は今まで通り回り始める。
二回生になって一回生のときと同様、弘瀬ゼミに所属していた私は、ゼミ終わりに先生から呼び出され、なんのお叱りかとびくびくしながら研究室のドアを叩いた。
「お、片岡。忘れてんだが、これ桐生から預かってたんだ」
「え」
扉を開けて開口一番に、弘瀬先生は小さな封筒を私に見せて衝撃的な発言をもたらした。
「春休み、挨拶に来てくれてな。そのときに片岡に渡してくれって。お前ら、親しかったのか?」
「いえ、そんな……」
誤魔化すように言葉を濁したけれど、弘瀬先生は余計な詮索をすることなく続けた。
人伝いに聞いた彼の話。ヨーロッパにある建築学が進んでいる大学に入学するためにここは一年で退学したのだと。
本当は高校を卒業した後にそのまま留学する予定だったけれど、家庭の事情や入学手続きの関係で一年伸びたんだとか。
寝耳に水だった。彼はそんなこと一言も言ってなかったし。でも、幹弥のマンションを訪れたときに、段ボールがいくつか転がっていたのを思い出した。
どうしてなにも言ってくれなかったのか、なんて思うほどでもない。彼にとって私は、そこまでの存在でもないし、別れることが決まっていたから、ああいうことになったのかも。
私も彼ともう顔を合わすことがないと聞いて少しだけホッとした。それが全部だ。彼がいなくなっても、私の大学生活は今まで通り回り始める。
二回生になって一回生のときと同様、弘瀬ゼミに所属していた私は、ゼミ終わりに先生から呼び出され、なんのお叱りかとびくびくしながら研究室のドアを叩いた。
「お、片岡。忘れてんだが、これ桐生から預かってたんだ」
「え」
扉を開けて開口一番に、弘瀬先生は小さな封筒を私に見せて衝撃的な発言をもたらした。
「春休み、挨拶に来てくれてな。そのときに片岡に渡してくれって。お前ら、親しかったのか?」
「いえ、そんな……」
誤魔化すように言葉を濁したけれど、弘瀬先生は余計な詮索をすることなく続けた。