クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 翌日の土曜日。雑誌やインターネットでデートのコーディネートについて情報収集し、手持ちの服と見比べながら悩むこと、早数時間。

 半信半疑だった幹弥からの提案は、真面目に実行されるらしく『土曜日の十七時に駅の南口で』と一方的に約束を取りつがれてしまった。

 先にお願いをきいてもらった手前、無視することもできず、私はずっと落ち着かずにいる。時計を見ればもう三時を回っていて、気持ちだけが焦っていた。

 それにしても、幹弥はどういうつもりなのか。私とデートなんてして、なにが楽しいんだろう。ただの暇潰し? 中途半端に空いた時間でも、彼なら共に過ごす相手に困りそうもないのに。

 とにかく、今は彼の思惑よりも服を決めることが先決だ。張り切った格好をして、馬鹿にされるのも嫌だし、かといって、あまりにも彼と釣り合いのとれていない格好なのも、それはそれで申し訳ない。

 長考の結果、なんとか決断を下す。ウエスト切り替えのチェック柄の襟付きワンピースをメインに白のダッフルコートとブーツを組み合わせよう。

 無難な気もするけど、これが私の精一杯だ。着替えて、姿見で再度確認したところで、ふと肌寒さに身震いした。

 エアコンをつけているけど、薄いのだろうか。しばらく葛藤し、結局ワンピースのうえにさらにグレーのニットを羽織ることにした。

 色は落ち着いているけれど、リボンがあしらわれ、なかなか可愛らしい。デートに相応しいかと言えば、地味さが増しただけの気がするけど、もうしょうがない。

 あとは化粧をして、髪もせっかくだから巻いてみよう。あんなに時間に余裕があると思っていたのに気づけば約束の時間三十分前で、私はバタバタと出かける羽目になった。
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