クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「いいよ」

 どんな反応があるかと予想するまでもなく、あっさりと返ってきた答えに面食らう。彼を見れば、やっぱりおかしそうに笑っている。

「この部屋、なんて言わず、優姫が欲しいなら、マンションごとあげるけど?」

 その切り返しで悟る。彼にとって私は、まるでさっきの女の子みたいに駄々っ子の相手をするようなものなんだ。

 悔しいような、余裕の差を見せつけられたような。私は再び軽く身を起して、幹弥に向き直った。

「あのね、そんなこと簡単に言わないで。私が本気だったらどうするつもり?」

「俺も本気だけど」

 間髪を入れず返された言葉は、逆に私を狼狽えさせた。たしなめるように告げた言葉なんてまったく意味がない。

 幹弥はベッドに手をついて、私との距離を静かに縮めてきた。金縛りにでもあったかのように動けなくなる。

「優姫が望むなら、なんだってあげるよ」

 そのまま軽く唇が重ねられ、私はすぐさま顔を背けた。

「風邪、移る」

「そんな理由? いいね、移してみろよ」

 今度は頬に手を添えられ、逃げられないようにして再び口づけられる。唇の力を緩めると、待ってましたと言わんばかりに彼の舌が口内に侵入してきて、キスはあっさりと深いものになっていく。

 熱い。心臓が激しく脈打って、体温も上昇していく。でも、ろくに抵抗しないのは、この熱のせいだけじゃない。

 幹弥の服を縋るように掴むと、落ち着かせるように背中をさすって強く抱きしめ直してくれる。
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