クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 苦しい、のにやめて欲しくない。甘さなんて微塵もない、熱を伴った苦さが残るだけなのに。彼のタイミングで口づけが終わると、私は幹弥にもたれかかり、息を整えようと深く息を吐いた。

 絶対に熱が上がった。声も出せずにいたけれど、私の背中に回っていた手が不意打ちのように、シャツの裾から滑り込んできたときにはさすがに叫んだ。

「やっ……つめた」

 感触とか、されていることとかよりも先に、あまりにも冷たい幹弥の手に体が驚く。彼の手はゆるゆると労わるように私の肌に直に触れてきた。

「優姫が熱いんだよ。少し熱を奪うから」

 宣言通り、彼の手が触れたところは心なしか熱が逃げていく。脇腹から背中を撫でられて、違う意味で熱が篭っていく。熱いのか、鳥肌が立って寒いのかわからない。

「んっ、やだ。離して」

 抗議するも、幹弥の手は休みなく私に触れて、冷たかった手は、いつのまにか温かく感じた。そのまま前を触られはじめ、私は泣きそうになる。

 長い指が汗ばんだ肌に這わされ、熱を奪うどころか与えられていく。胸元を弱々しく刺激するように触るのは絶対にわざとだ。

「気持ちいい?」

 意地悪く囁かれ、音を立てて耳たぶに口づけられる。声にならない吐息をもらして、言い知れないもどかしさに、きつく目をつむった。

 無意識に彼の服を握って、耐える。このままどうするんだろ。

 そのとき、ふと手が止まって、肌から離れたので、おそるおそる彼の方を向けば、目尻に軽く唇を寄せられる。
< 95 / 129 >

この作品をシェア

pagetop