クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 ふと意識がクリアになり、目が覚める。ほのかに暗い部屋は自分の家じゃないことにすぐに気づいた。ゆっくりと体を起こして、そばに置いてあった携帯を確認すると、午前六時過ぎ。

 気だるさは残るものの熱はすっかり下がったみたいだ。連日の睡眠不足もあったのかもしれない。久々にたくさん寝られた。ゆっくりとベッドから抜け出し、部屋を出る。

 幹弥はいるかな? ほかの部屋を覗くのは気が引けたけれど、その心配はいらなかった。リビングに足を進めると、彼はソファに横になっていたから。

 その瞳は固く閉じられている。電気はつけっぱなしで、手には読みかけだったのか、難しそうな本が一冊。

 何時まで起きていたのか、まったく起きる気配を見せない。いつもこんな感じなのか、私のせいなのか。その姿になぜか胸が締めつけられる。

 エアコンが効いているので寒くないけれど、このままでは幹弥も風邪を引いてしまう。なにかかけるものでも、と思い私は寝室に戻って、クローゼットを開けた。そこで私は意外なものを発見して、目を見開く。

 淡いピンク色のコート。どう見ても女物だ。まっさらでもないし、もちろん私のものでもない。

 ぐっとなにかを堪えるように唇を噛みしめる。それからブランケットを発見し、再びリビングに戻ると、幹弥を起こさないようにそっとかけた。

 思えば、彼の寝顔を見るのは初めてだ。無防備な姿は、眼鏡をはずしているのもあってか、どこか幼くも感じる。
 
「ごめん、ね」

 小さく謝罪の言葉を漏らして、私は寝室に戻ると、てきぱきと身支度を整えた。起こすかどうか、迷いつつも今言葉を交わすと余計なことを言ってしまいそうで、書置きを残して彼の家を後にする。

 本当は直接お礼を言うのが筋なのに。
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