運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
予想もしていなかったカミングアウトに、一瞬耳を疑った。
心臓に、病……? しかも、すぐに手術しなければいけないって……。
「でも、そのことを知っているのは院長と藍澤先生だけ。クローゼットに隠れたのは、病気のことを知られたくなかったからよ。藍澤先生が多くを語らなかったのも、私という患者の意思を尊重してくれたからなの」
そんな……。じゃあ、昨夜当直室では、私の想像したようなことは起きていなかったんだ。
誤解が解け、真実が胸に落ちていくのと同時に、目の前の早苗先生をやっと素直な瞳で見つめられるようになる。
早苗先生、本当は病気のこと誰にも知られたくなかったはずなのに……私が予告もなく当直室を訪ねてしまって、しかも藍澤先生とあんな険悪な空気になってしまったのを見ていたから……わざわざ心配して、病気のことを打ち明けてくれたんだ。
私が思い込みからひとりで勝手にショックを受けてしまっただけなのに……謝らなきゃいけないの、私の方じゃない。
「早苗先生、ごめんなさい。私……」
「いいのよ。あなたが不安そうにしていたのに、私たちが何も話さなかったのが悪いんだもの。それに、私は一か月後に渡米して手術することが決まっているわ。病院を辞めることにしたもそのせい」
早苗先生はあっけらかんとしているけれど、一か月後だなんて遅すぎるんじゃないの?
しかも、どうしてわざわざアメリカに?