運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


無意識に立ち上がり扉の方を見守ると、すぐにブルーのスクラブ姿の藍澤先生が出てきた。

私たちに気付いた彼はこちらに歩み寄ってきて、真剣だった表情をふっと柔らかいものにすると、安堵したように語った。


「無事に終わりました。もうちょっと遅かったら危なかったですけど、美琴ちゃんが連絡してくれたから、スムーズにオペに入れましたし」

「それで、早苗先生は……?」

「今は眠っているけど、もう大丈夫。入院期間は長くなるだろうけど、しっかり治ったらじきに普通の生活が送れるようになるよ」

「よかった……!」


心から安心して、ストンとベンチに腰を下ろした。父の手が頭の上に乗せられ、子どもの頃のようにぽんぽんと撫でてくれた。

藍澤先生はそんな私たち親子を微笑ましそうに見つめた後、父に向かって尋ねる。


「院長、美琴ちゃんのこと、ちょっとお借りしても?」

「もちろん。というか、もう俺の許可はいらないだろう。昨夜のパーティーで、予想以上に美琴がきみに惚れ込んでいるのを知ったからな」


父にからかうような視線を向けられ、慌てふためいた。


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