運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「ちょ、ちょっとお父さん、余計なこと言わないで!」
父が言っているのは、蘭子さんとの言い合いの件だろう。あれを本人にバラされるのは恥ずかしすぎる!
「パーティー?」
「な、なんでもないです藍澤先生。さ、行きましょう!」
父がこれ以上余計な話をする前に、と藍澤先生の腕をぐいっと引っ張りながら、私はその場を離れる。
この辺までくれば平気かな……と、彼の腕を離したところで、私ははっと我に返った。そういえば、さっきから普通に会話してたけれど、私たち気まずい状態だったのでは……。
ちらっと上目遣いに彼の顔を確認すると、彼の方も微妙な心境なのか、曖昧な笑みを浮かべてひとこと。
「俺たち、ゆっくり話さないと、だよね?」
「……はい」
「廊下じゃナンだから、副院長室にでも移動しよっか」
そっか……今なら誰もいないはずだもんね。
彼の言葉に従い、私たちは副院長室に向かって再び歩き出した。