運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「あなたが“あの二人はうまくいってない”って言うからさんざん暴言吐いたのに、逆にやり返されてこっちがミジメって、どーいうことよぉ!」


ヒステリックに喋っているこの女性の声……もしかして、蘭子さん? どうしてこの病院の副院長室なんかにいるの?


「それは完全に想定外です。まさか、美琴お嬢様があなたのような下品で高慢な人間に言い返す度胸があるなんて……」


え、え、ちょっと待って。この声……そして私を“お嬢様”だなんてうやうやしく呼ぶのは、たった一人。……工藤さんしかいない。

びっくりして思わず声が出そうになってしまうけれど、隣で一緒にしゃがんでいる藍澤先生が“しっ”と口元に人差し指を立てたので、なんとか押し黙る。


「ちょっと、私だけがしょーもない人間みたいに言わないでくれるぅ? あの子の気持ちを手に入れたいがために、手を組もうと言ってきたのはあなたの方でしょ?」

「……手を組んだ? いえ、利用させてもらっただけですよ。私は美琴お嬢様が手に入ればそれでいい。あなたと藍澤天河がどうなろうと知ったことではありません」


これ、工藤さん……? 別人なんじゃないかと疑いたくなるほどの冷ややかな物言いに、ショックを隠せない。

しかも私の名前まで出てきて、内容的にも雲行きは怪しくなるばかり。


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