運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


ぎくりとしたような、二人の声が聞こえる。これは、タイミングを逃す前に私も出て行った方がよさそう……?

おずおずとソファの影から顔を出す。すると工藤さんと一瞬目が合って、けれど即座にふいと逸らされてしまった。

そんな態度を取るってことは、やっぱりさっきの会話は本当のことなんだ……。ずーんと沈んでいる私の隣で、藍澤先生が子供を諭すような口調で蘭子さんに話しかける。


「蘭子ちゃん、おイタが過ぎるんじゃないの? こないだ言ったはずだよね。俺はきみを愛人にする気なんてないって」


な、なんですかその衝撃の会話は……! しかも“こないだ”っていつ?


「だってぇ~、同じ“院長の娘”なのになんで私じゃダメなのかってムカついてぇ」


蘭子さんは先日のパーティーの時のように、パーマがかった髪の毛先を指にくるくる巻き付けながら、グロスの塗りたくられた口をとがらせる。


「少なくとも美琴ちゃんはそんな品のない喋り方はしないよ。それに、この子は特別。俺が初めて、運命を感じた相手だから」


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