運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
とはいえ、照れる気持ちはなかなかぬぐえなかった。
脱衣所に連れて行かれた私は、「どこから脱がせようかな」と、ウキウキ思案する彼に、異議を申し立てる。
「……は、恥ずかしいので、もっとパパッと脱がせてください」
「やだ。じっくり見たいんだもん」
「……うう」
彼の手にかかれば、服を脱がせるのすら、前戯の一種になってしまうらしい。
一枚一枚丁寧に、贈り物の包みを剥がすようにして取り去られる衣服。徐々に露わになっていく素肌にいくつものキスを落とされ、そこからじわじわと、体が熱を持っていった。
やがてバスルームに入ると、頭上から熱いシャワーの雨が降り注ぐ中で壁に背中を預け、彼の器用な指先に、体の隅々まで甘い悦びを与えられた。
湯船につかると、藍澤先生はすでにのぼせ気味の私を向かい合った状態で抱きかかえ、こんなおねだりをした。
「ねえ美琴ちゃん、初めての夜みたいに名前で呼んでほしいな」
「……天河、さん……?」
「うん。……いいね。その方が、やっぱ興奮する」
こ、興奮って……! そんな赤裸々に言わないでください……!
羞恥心を煽る発言と、しっとりと濡れた前髪から覗く獰猛な瞳にドキッとしたその瞬間、私の腰をつかむ彼の手に力が入り、あたたかいお湯ごと彼が入ってきた。
「あ、――」
ようやくひとつになれたうれしさと、こみ上げる愛しさで、自然と瞳に涙が浮かぶ。