運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
泣き顔を隠すようにぎゅっと彼の首に抱きついて、頬をくすぐる彼の濡れた髪に顔を埋めながら、私は胸にあふれる気持ちを、内緒話のように小声でささやいた。
「天河さん……だいすき、です」
「美琴ちゃん……俺もだ。きみが愛しくてたまらない」
余裕なく、切なげな瞳で訴えるように語り掛けてくる藍澤先生。
愛を囁き合うと再び感情が高ぶって、私たちは体をつなげたままで貪るように、お互いの唇を求めた。
ベッドに移動したころにはすっかり疲れ果てていたけれど、お互いにいつまでも相手の顔を見ていたくて、なかなか眠らずに指を絡め合って握ったり、キスを繰り返して過ごした。
仕事の疲れもあるのか、先に眠りに落ちていたのは天河さんの方だった。その無防備な寝顔は悪魔とは真逆の可愛らしさで、私は思わずふふっと笑みをこぼす。
「おやすみなさい、天河さん」
本当の新婚生活も、きっと今日のように甘いんだろうな……。
楽しみなような、ドキドキし過ぎて自分の心臓が耐えられるか心配のような……。どちらにしろ、幸せなことには変わりないけど。……なんて、のろけ過ぎかな。
そんな、この上なく満ち足りた気持ちで、私は穏やかな眠りについた。