運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
今どき、白馬の王子? そんなの、小学生だって待っていないと思うけど……。
そんな女性が本当に存在するのかと疑いたくなるほど驚いたが、もしも本当なら、興味をそそられる。
「……一度、会ってみたいですね。そんな無垢な心を持った娘さんなら」
「そうかそうか! 親バカかもしれんが、なかなかかわいい子だぞ。近いうちに皆で食事でもしよう」
すっかり乗り気の神鳥院長はそう約束してくれたが、肝心の娘“美琴ちゃん”が、しばらくの間友達と卒業旅行に出かけてしまっているらしい。
そういうことなら、彼女が帰ってきた時にまた……と俺はのんびり構えていたのだが。
美琴ちゃんが帰国するはずの日に、弱り切った様子の院長から連絡があった。
『藍澤くんの話をしたら、美琴がへそを曲げてしまってベネチアから帰ってこないんだ。しかし一緒にいた友人は帰ってきたようで、美琴は今海外でひとりきり……さすがに心配だから、秘書に迎えに行かせようと思う。食事の予定はまた後日――』
俺の話をして、へそを曲げる女の子……。それは初めての反応だ。しかも、帰国することまで拒否してるなんて、けっこう頑固なところもあったりして?
ふうん……ますます気になるな、美琴ちゃん。一体どんな女の子なんだろう。
むくむくと湧き上がる彼女への興味は、俺に大胆な行動をとらせた。
「それなら、ベネチアまで俺が迎えに行きます」