運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
親バカなんかじゃないですよ、神鳥院長……。なんて、遠い日本の地にいる彼に胸の内で語り掛けつつ、なんとかして彼女と一日デートする約束を取り付けることに成功。
このチャンスを逃してなるものかと意気込む俺だったが、デート開始早々、父親から無理やり持ち掛けられた結婚話について語っていた彼女の言葉に、俺は一瞬固まった。
「……単に自分が結婚なんてまだ考えられないというのもありますけど、その相手、どうやら“悪魔”のような男らしいんです」
あちゃー、悪魔の噂をもうご存じだったとは……。本当なら早い段階で素性を明かし、俺との結婚を前向きに考えてもらうつもりだったんだけど……こうなったら、作戦変更。
俺は外科医藍澤天河としての顔を一旦隠して、彼女に笑いかけた。
それこそ、腹の中で悪魔の計画を企てながら。
「きみは幸運だ。俺という、運命の相手に出会えたんだから。悪魔だって、運命の二人には敵わないよ、きっと」
……ゴメンね。強引にでもきみを手に入れるため、俺は今から悪魔になる。
“運命の相手”として全身全霊できみを誘惑し、口説いて、心の隙に入り込んで。
俺が“悪魔本人”だと気が付いた時には、もう取り返しがつかなくなっているくらいに、俺に溺れさせてあげる。
こんなにも強い衝動にかられて、誰か一人を強く求めるのは初めてのことだった。
これが神様の決めた運命かどうかは知らないけれど、そうでなくても、俺自身の手で運命に変えてみせる。
ねえ、美琴ちゃん。俺はそれほどまでに、きみが欲しいんだよ――。