運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「時間は、平気みたいだよ?」
「いや、ですから、ここは病い――ンッ」
強引に唇を奪うと、怒ったような、それでいて熱に浮かされた瞳をした美琴ちゃんに睨まれる。……でもその可愛い顔、逆効果だって。
俺は思わず小さな背中に腕を回し、ぎゅっと抱き寄せた。そして柔らかく愛しいぬくもりを確かめながら、週末の予定を彼女に提案する。
「次の土日、二人だけでさ、また箱根行こうよ。それで、あの旅館……なんだっけ。美琴ちゃんが生を授かったところ。あそこに泊まってさ」
「山翡翠のことですか? っていうか、なんですか“生を授かった”って」
あれ? これ、美琴ちゃんのお母さんとの、内緒の話だったかな……。ま、いいか。おめでたい話なんだから。
「美琴ちゃん、山翡翠ベビーなんだってさ。お母さんが言ってたよ」
「な、な、なんでそんな恥ずかしい話を……! もしかして、前に箱根に行くとき、うちの玄関で話していたのって……」
「そうそう、その時に聞いた」
あっさり肯定すると、美琴ちゃんが頭痛を堪えるように額に手を当て「お母さんってば……」と呆れた。俺はふっと笑みをこぼし、彼女に問いかける。