運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
Epilogue*神様の目を盗んで、悪魔と誓う愛
――九月初旬の、ある晴れた日のこと。
今私は、病院からもほど近い、海の見える結婚式場の一室……花嫁の支度部屋にいる。
今日は待ちに待った、私と天河さんの結婚式。すでに入籍は済ませていて、彼のマンションで一緒に生活をはじめながら、この晴れの日を迎える準備を着々と進めてきた。
純白のウエディングドレスは、憧れのプリンセスライン。ふんわりと膨らんだレースの裾に、いくつもの花がちりばめられた、可愛らしいデザインだ。
「美琴ちゃん、準備できた?」
「……はい」
ドアの向こうから聞こえた愛しい人の声に返事をして、鏡の前から立ち上がる。
背後でドアが開き、ゆっくり振り返ると、ブラックのタキシードに身を包んだ天河さんが、穏やかな微笑をたたえながら部屋に入ってきたところ。
「……すごく綺麗」
上から下まで私の姿を眺め、噛み締めるように呟いた天河さん。
そんなに正面から褒められると照れてしまうけど、今日という大切な日くらい、素直に受け取ろう。私も彼を見つめて、華やかなピンク色のリップが塗られた口を開く。