運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「ありがとうございます。天河さんもよくお似合いですよ」
「まあね。これ、悪魔色だし?」
タキシードの襟をつかみ、自分の姿をしげしげ観察しながら言う彼がおかしくて、私はクスッと笑う。
「こんな日も悪魔になるつもりですか?」
「それもそうか。教会から追い出されちゃうね。じゃあ、神様が見てないうちに……」
悪戯っぽくニッと笑った彼は、オフショルダーのドレスから覗く素肌の肩に両手を置き、私の唇にひと足早いキスを落とした。
メイクが落ちちゃいそうだけど、一度くらいならいいか……。私は静かに目を閉じ、甘い感触にしばし酔いしれる。
しかし、いつの間にか大きな手ががっちり頭を固定しているのに気が付き、なんとなくおかしいなとうっすらまぶたを開けると、天河さんは長い睫毛を伏せ、いまだキスに集中している。
えーっと、ちょっと長くないですか?
「あの……天河さ……ふぁ!」
一度唇が離れたタイミングで喋ろうとしたのに、まるでそんな私を黙らせるように、再び彼の唇が舞い降りる。
ちょ、ちょっと待って、終わる気配がない……!
その後も二度三度と、角度を変えて何度も唇を啄まれ、私はだんだんと慌ててくる。