運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「そうだよ。着くのは夜だけど」
『週末の土曜は何も予定はないか?』
「うん、特にないよ」
『じゃあ、空けておいてくれ。会わせたい男がいるんだ』
家族で食事でもするのかと思いきや……会わせたい男? 飛び出したワードが予想外で、私の足が止まった。少し先を歩いていた真帆が、不思議そうに私を振り返る。
「……誰なの? それ」
『まぁ、詳しいことは後で話すが、お前の結婚相手になる予定の――』
「な、何言ってるの!? 結婚なんて、まだ……っ」
あまりの衝撃に、スマホを落っことしそうになってしまう。
そりゃ私もいちおう成人はしてるし大学も卒業したけど、まだ学生に毛が生えたようなものなのに、結婚相手!? しかも“なる予定”って、本人の意思を無視して何を勝手に話を進めてるの!?
『藍澤(あいざわ)くんは凄腕の心臓外科医だぞ? その腕にほれ込んで、ウチの病院に引き抜いたんだ。ルックスもなかなかだからナースたちも喜んでるし、お前もきっと気に入るはずだ』
父はこちらの混乱ぶりなど意に介さず、呑気にそんなことを言っている。
苗字は藍澤か……って記憶にとどめておくまでもないってば! ついでに職業もルックスもどうでもいいよ! 今はそれ以前の問題!