運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
空港の立体駐車場に着き、工藤さんの車に乗り込むとなんだか色々張り詰めていたものが緩んで、思わず欠伸が出てしまった。
工藤さんはゆっくり車を発車させながら、優しく目を細め言ってくれる。
「長旅でお疲れでしょう。眠っても構いませんよ」
「ありがとうございます。でも、工藤さんにはいろいろと聞きたいことがあるんです」
「ええ。いいですよ、なんなりと」
院長秘書である工藤さんなら、今私の身に起きている状況をきっと理解しているよね。父の思惑や、悪魔が実際どんな医者なのかとか、この際全部聞いてみよう。
「……まずですね。どうして私はあく……藍澤先生と結婚させられることになってるんでしょうか? 寝耳に水っていうか、あまりにいきなりだったので、びっくりしちゃって……」
「そうですよね。僕も、お嬢様の年齢で結婚というのはいささか早すぎる気がしますし、その上よく知らない相手とだなんて、不安ですよね?」
工藤さんの温かい眼差しに、じーんとしてしまう。ああ、ようやく私と同じ価値観の人が現れてくれたよ。工藤さん、やっぱり天使だ。