運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
それ……真帆から聞いた噂と同じだ。複数の人から同じ情報が入るってことは、もはや事実と考えていいよね。それだけ色々な女の人と関係してたら、テクニシャンにもなるわけだよ……。
「その上出世にも貪欲で、前の病院の院長の娘をたらし込み次期院長を狙っていたようです」
「えっ?」
私はまさか、と眉根を寄せる。だって、すごく似たような話を現在進行形で知っているんですけど……。
「じゃあ、私との結婚も……?」
「……あくまで噂ですが、僕は心配しています。一度院長の耳にも入れたのですが、まともに取り合っていただけなくて」
そこまで話した工藤さんが、心苦しそうにため息をついた。なんだか、関係のない工藤さんまで悩ませてしまって、申し訳ないな……。
「すみません、私のことで余計な心配をおかけして」
「余計だなんて、とんでもない。僕では大したお力にはなれないかもしれませんが、相談くらいには乗れますから、何でも言ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
工藤さんってば、ホントに優しい。
状況は変わっていないし、むしろあの悪魔のイメージがより恐ろしくなっただけだけど、話を聞いてもらえて少し心が軽くなった。
と、同時にすさまじい眠気がやってきて、私は自宅に着くまでの間、安心できる工藤さんの隣で寝かせてもらうことにしたのだった。