運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


帰国した翌日は土曜で、私は一日中ゆっくり過ごしたかったのだけど、そうはいかなかった。父がセッティングした悪魔との食事会が夜に迫っていて、その準備をしなければならなかったから。


「美琴~、支度できた~?」

「うん、今行く」


夕方六時ごろ、階下から母親に呼ばれて、自室を出た。玄関で待っていた母はピンク色のスーツに、キラッキラのダイヤのネックレスを合わせていて、どんだけ気合い入ってるの……とちょっと引いてしまう。

そんな彼女は、私の着ている気合い皆無のシンプルなグレーのワンピースを見るなり渋い顔で指摘した。


「ちょっと、そんな地味な服で行こうと思ってるの? 藍澤先生がっかりしないかしら」

「服装ひとつでがっかりするような人なら結婚したくない」

「何言ってるの。旅行中にすっかり仲良くなって帰ってきたくせに」


からかうように言った母。彼女も父経由で私と藍澤先生の一夜のことを知っているらしいから厄介だ。例の証拠写真も見たようだし。


「いや、それは……」

「早く行くわよ。お父さん達もう病院から出たって」


……うう、こっちの話、全然聞いてくれない。

がっくり肩を落としながら、家の前で待たせていたタクシーに乗り込んだ。


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