運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「そんな人と会う気はありません!」
『まあそう言わずに一度会ってみればいいじゃないか』
「い・や! どうしても会わせるって言うなら、私帰国するのやめる!」
電話口で感情的にに言い放つと、父の口調が呆れたような、静かなものになった。
『……子どもみたいなことを言うな。これは決定事項だ。お前に帰る気がなくても秘書に迎えに行かせる』
「ねえっ。こんなのあまりに横暴――っ」
まだ反論の途中なのに、父は無情に電話を切った。静かになったスマホを見つめて、思わず深いため息をこぼす。そんな私を見て怪訝そうに近づいてきた真帆に、私は今の電話の内容を説明を愚痴交じりに説明した。
「もーお父さんってばやんなっちゃう。いくら私が流されやすい性格でも、結婚相手くらい自分で決めさせてよ」
「美琴は運命の王子待ちだもんね」
「……うん。結局、旅行中も現れてくれなかったけどさ」
バカみたいと笑う人もいるかもしれないけど、私はいつか王子様のような男性が自分を迎えに来てくれることを夢見ている乙女。
彼氏がいたことも片思いの経験もないけど、それもきっと、運命の相手が現れていないからなのだと信じているのだ。