運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「無責任な院長よねぇ。美琴は幸せよ、真面目な人を夫にできて」

「真面目……?」


その言葉にはちょっと異論があるんだけど。と、酔いが回ってきた勢いもあって、母に意見しようとした時だった。

ん? ……なんか、足がくすぐったいような。不審に思ってちらっと下を向くと、テーブルクロスの下に隠れた私の太腿に、藍澤先生の手が伸びている。

ちょ、ちょっと! 角度的に両親からは見えないだろうけど、いきなり何をしてるのこの悪魔は!

思わず藍澤先生をきつく睨みつけるけれど、“余計なこと言ったらお仕置きだよ?”とでも言いたげな、恐ろしくも妖艶な瞳に見つめられる。

その悪魔オーラに負け、私はまるで金縛りにあったかのように動けなくなってしまった。

すると私が抵抗しないのをいいことに、彼の大きな手が、スカート越しの太腿を焦らすような手つきで撫で始める。

やばい……そんな風に触られると、なんだかこの人に抱かれた夜のことを思い出しちゃう……。

ダ、ダメ! 目の前のご馳走に集中しよう!

ぶんぶん首を横に振り、気をそらすようにして急に食事にがっつき始めた私に、藍澤先生はひとり満足そうにククッと喉を鳴らした。そしてようやく手を太腿から離し、悪戯をやめてくれる。

……こんの悪魔め。私の反応見て楽しんでるわね?

まったく、油断も隙もありゃしないんだから……。



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