運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
一旦ほっとしたのもつかの間、藍澤先生は真面目な顔になり、両親に宣言する。
「美琴さんはまだお若いし、急に目の前に現れた僕に、戸惑っている部分もあると思います。でも、僕はベネチアで彼女に会った時に、一目惚れしてしまって……気持ちが抑えられなかった。あの夜のこと、もしも美琴さんが後悔しているなら謝ります。でも、その後悔が消えてなくなるくらいに、彼女を全力で愛する自信ならあります」
ちょっとちょっとちょっと。突っ込みどころが多すぎて、どこから指摘したらいいんだか……。
だって“愛する自信”? “愛するフリをする自信”の間違いでしょ?
「だから……」
なおも真剣な態度を崩さない藍澤先生が、体の向きを変え急に私の方を向いた。ぎょっとして身構えていると、両手を包み込むようにガシッと握られ、切実な眼差しで見つめられた。
「改めて、きみに結婚申し込みます。ゆっくり、二人で愛を育んでいこう」
ど……どうしよう。なんて返事をしたら……。背中をたらりと冷や汗が伝う。
藍澤先生は一見穏やかな笑みを浮かべているけれど、黙ったままの私を脅すかのように、だんだんと手を握る力を強くしてくる。
ひいい、やっぱり悪魔だっ。結婚なんて、無理です……!
「私……っ」
意を決して、きっぱり断ろうと息を大きく吸ったその時。