運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「もちろん。けっこう有名な噂だから、彼をうちの病院によこすと聞いた時は、耳を疑ったわ。院長には院長のお考えがあるんでしょうけど……院内の風紀が乱れるんじゃないかって心配で。まあ、美琴ちゃんと結婚したら落ち着くのかしらね」

「……いや、そんな一筋縄でいくような人には見えません」


あからさまに憂鬱なため息をこぼす私に、早苗先生が苦笑しながら「そうねえ」と同情してくれる。それから、思い出したように話し出す。


「そういえば、次期院長を狙ってるなんて噂もあるみたいだけど、冗談じゃないわ。長年この病院に尽くしてきた私やその他の医者を差し置いて、そんなに早く出世がかなうわけがないじゃない」

「そ、そっか。よく考えればそうですよね……!」


今現在、この病院で父の次に偉いのは、早苗先生なのだ。次期院長だって、そのまま早苗先生が就任するのが自然だよね。何でもかんでも悪魔の思惑通りに事が運ぶわけがない。

説得力のある早苗先生の話に、ウンウンと頷く。


「美琴ちゃんと彼との結婚にもしもそういう裏があるのだとしたら、いくら相手が院長でも抗議しに行くから、そのつもりでね」

「ぜひ! 私からもお願いします!」


< 46 / 166 >

この作品をシェア

pagetop