運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


白衣姿だけでくらくらしている私に対し、余裕たっぷりに微笑み、悪魔相手に毒を吐く早苗先生がカッコよくて惚れ惚れしてしまう。

そうよ、いくらすごい医者で、顔もよくて口もうまいからって、世の中のすべての女性があなたになびくわけじゃないんだから……!

そんなことを思って仏頂面をつくっていると、藍澤先生が許可もなく私の隣に腰を下ろして、エラそうに長い足を組んだ。


「……ま、北条先生は悪口も言いたくなりますよね。いきなりほかの病院からやってきた男に、副院長の座を明け渡さなきゃいけないんだから」

「え……っ?」


ということは、噂はやっぱり真実だったの……?


「どういう意味かしら?」


今まで表情を変えなかった早苗先生の眉が、ぴくりと動く。


「言葉通りですよ。近いうちに、ここは俺の部屋になる。その様子だと知らなかったみたいですけど、そろそろ院長から話があるんじゃないかな」

「そんなの、認めないわ……! 直接院長と話してきます!」


早苗先生は取り乱した様子で言い残し、白衣をひるがえして慌ただしく部屋を出て行ってしまった。


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