運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
悪魔の浴衣姿にのぼせて
婚姻届けを託されたまま五日が過ぎ、迎えた週末の土曜日。
私は居酒屋の小さな個室で、就職先での研修を終えた真帆と、旅行以来久々に再会していた。
「研修お疲れさま、真帆」
「ありがと。そんなことより、私は美琴の話の方が興味津々~」
ビールで乾杯し、お互い一口飲んだところでさっそく真帆に突っ込まれる。悪魔とのことはまだ何も話していないから、すべてを知ったら腰を抜かすんじゃないだろうか。
そんな心配をしつつも、ベネチアでの一夜から、悪魔と家族での食事会、婚姻届けの件まで、私は順を追って話していった。
「なるほどねえ。それにしても、海外旅行先で出会ったアヤシイ男と一夜を共にしちゃうなんて、危ないよ。私が一緒にいたら絶対に許さなかったのに」
「だよね……私、あの悪魔が運命の相手だって完全に思い込んでたからさ……流されてしまったとしか……」
浮かれていたあの時の自分を反省して、肩をすくめる。けれど真帆はそれ以上私を責めることはなく、焼き鳥の串を片手にニヤリと笑って言った。
「にしても、今までお堅かった箱入り娘の美琴を一日でその気にさせるとは、相当の手練れだねえ」
「う、うん……。たぶん、それも含めて“悪魔”なんだと思う。あの人の手に触られると、理性が飛んでっちゃうし……キスとかも、拒めなくて」