運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
『俺が車出すから、少し遠出してもいいよ』
「そうですね……」
真帆やその他の女友達となら、賑やかなテーマパークやショッピングも楽しいけれど、藍澤先生は私よりずっと大人だし、あまり疲れさせて病院での仕事に支障が出てしまったらよくないよね。
……そうだ、うちの家族でよく行くところならきっと大丈夫じゃないかな。藍澤先生と同じ医者で、不規則な勤務も多い父も大好きな、あの場所なら。
「日帰り温泉とか……どうですか?」
『温泉か……いいね。ちょっと激務が続いてて、あちこち痛かったんだ』
好感触な反応が返ってきて、ホッとする。
「箱根に、家族でよく行く旅館があるんです。庭園もきれいで、のんびりできますよ」
『じゃあ、そこにしよう。美琴ちゃん、ナビできる?』
「はい! 何度も行ったことあるので大丈夫です」
『じゃあ、昼前に車で迎えに行くよ』
「楽しみにしてま――」
――――す。と、何の迷いもなく言おうとした自分に、自分で戸惑った。
楽しみ? 悪魔とのデートが、何故?
自問自答していると、電話の向こうからククッと、悪魔お得意の黒い笑みが漏れたのが聞こえて。